2018年2月23日金曜日

境塾 2018年2月4日(日)  2歳と86歳

冬枯れの木々、しかし春を待つ芽を内包する木々を眺めながら歩く。武蔵境駅からゆっくり歩いて15分。歌詞のことだろうか、音楽のことだろうか。境塾に集まる方々は15分の間に何を思っているのだろうか。時間の不思議。待ち遠しいから長く感じ、楽しいからあっという間に過ぎゆく。音楽時間もまた1秒が1秒ではない時計にはない不思議時間。

さて境南コミュニティセンターで行われたこの日、4人によって歌われたのは
中田喜直作曲「乳母車」、「歌をください」
中西あかね作曲「愛されている」
近衛秀麿作曲「ちんちん千鳥」
寺嶋陸也作曲「星と砂」の5曲。

今までの境塾で健先生ははレガートに歌うことを「言葉を描く」と言われてきた。今回は同じ意味ではあるが「言葉を貫くこと」、「一つのフレーズを貫くこと」と言い方を変えて伝えられていた。
例えば、「乳母車」の中の“いつまでやまぬ、はるのあめ”と歌う間、「ひとつの言葉を貫く、リズムを刻んでいようが貫く」。例えば「歌をください」の中の“平和のうたを~”と「貫きながら山に登りつめる」。同じ指摘も、表現を変えることによって理解が深まり広がっていく。
そのほかに「気に入らないところがあったら先に行かずにこだわってみる」練習の仕方へのアドバイス、声に会った調整と選曲などの説明があった。また、声のチェンジについての知識と経験の分かち合いもなされた。
 
 「乳母車」の演奏を聴いていた聴講者が「自分たちの世代では使わないような美しい言葉を普段から使っているからこそ、言葉がよくわかり美しい日本語の歌詞が聞こえてきているのかもしれない」と発言していた。聞きながら日常の言葉使いも振り返り反省する。ここはレッスンでの先生の示唆と合わせて、聴講生からの様々な発言が聞ける学びの場でもある。

レッスン終了後は健先生の自宅への大移動・・・。
そして2月14日で満2歳の境塾と2月1日で満86歳となった健先生のお祝いの会が開かれた。お祝いのお赤飯を筆頭に、果物、手作りパン、サラダ、武蔵境で老舗のケーキ、
そのほか書ききれないくらいの沢山の心のこもった“おもたせ”を囲んでの和やかで賑やかななひと時を過ごした。“ハッピ―バースデイ!”


2018年2月2日金曜日

境塾 2018年1月7日(日) 

犬がほえる時の体の使い方には学ぶことがたくさんある。2018年戌年の、にほんの歌境塾は、「1月7日は歌い初めです。お一人一人の時間は短いですが沢山の方の演奏を聞くことができます。」というお知らせから始まった。
日本では年の始めに「書き初め」「稽古初め」など、習い事に対して改めて心静かに向き合う時間をもつ。「歌い初め」では、おせち料理とお餅で満たされた横隔膜の前後左右を充分に使うだけではなく、疲れた胃を七草粥の香りとビタミンで癒す繊細な日本の心と知恵と感性の使い初めにもなった。

今回、11人によって歌われた曲は「六騎」「病める薔薇」山田耕筰作曲、「紫陽花」團伊玖磨作曲、「雪うさぎ」中田喜直作曲 、「胡蝶花に寄せて」「落葉松」小林秀雄作曲、「竹とんぼに」木下牧子作曲、「寂庵の祈り」千原秀喜作曲、「誰が灯りをけすのだろう」林光作曲、「愛」猪本隆作曲、「小さな空」武満透作曲

この日は健先生にとっても「伝え初め」であった。声の事、テクニックの事、歌詞の理解、イメージの持ち方、スケールの感じかた、選曲の仕方などが伝えられたが、それは歌った一人一人のまさに今への指摘であり、また聴講している人にとっても自身に当てはめて考える意味のある言葉。人数からすると一人10分強の持ち時間、レッスンの予定であったが、健先生の「伝え初め」その教えは止まることなく、気がつくと一時間オーバーしての終了となった。

境塾が終わって数日後、健先生は、「僕は若い頃喉が上がったところで歌ってきたけど、今になって喉の位置がわかってきた。だから生まれ変わっても歌手になる。」と話している。終わる事のない歌の旅。

さあ!今年も、いい声で、美しい発音で、日本の歌を素敵に歌いましょう!