2018年3月31日土曜日

境塾 2018年3月4日(日) 春を待つ

たずねる人はそこにあった(二十年前の)
たずねる人はそこになかった(二十年前の)
見上げる窓はその窓だ(二十年前の)~
深尾須摩子作詩、高田三郎作曲、
『パリ旅情』の一曲目、“さすらい”。かつて大先輩が歌っておられ「二十年前の~」という部分には、摩擦する「十」(じゅう)という発音の上に、かすむ年月と甦る感情が息とともに流れていて心震えた。
当時の筆者にとっては長く遠く感じられた「二十年前」。という歳月。二十年の間には何回太陽が登っては沈むのだろうか?石の上にも三年の七倍。十年一昔の二倍。生まれた赤ちゃんは成人しているし、細かった木は年輪を重ねて大木になっているかもしれない。
鮮明に記憶に残っている「二十年前の」という大先輩の声の響き。その方が境塾で歌われた。健先生のレッスンは、代講レッスンを受けてからなんと四十数年ぶりらしい。「二十年~」の倍以上。そこにはどのような音と時間が流れていたのだろうか。

さてこの日、境塾では、鼻濁音についてのディスカッションがあった。「十五夜お月さん」は鼻濁音か否か。後日、受講者も聴講者もNHKの発音などを調べて知識を深め練習し実践していくという、まさに、注目のアクティブラーニング。

技術的なこととしては、四人の受講者個々の問題のある部分について、感情と感覚の説明を的確にすること、母音を連ねてレガートを作ることの大切さ、聞こえにくい子音聞こえやすい子音についての伝え方、声と言葉の攻めかたと攻める場所、フレーズの頭ではなく語の頭を大切にすることなどが取り出されて伝えられた。
そしてそれらを「永遠に練習しなさい!」と。

強く印象に残ったのは、みるみるうちに変わり本来の艶のある声を出した受講生への「いい声出さなきゃもったいないよ!」という、にほんのうたを歌う人全員への健先生の願いとも言える言葉。

すべてのレッスンが終わった後、前述の大先輩は皆さん頑張ってください!私も頑張ります!と。
5月にまた受講を希望された大先輩の、学ぼうとする姿勢に頭がさがった。

次回四月は待ち遠しかった桜のトンネルをくぐっての再会。その桜は何年前から咲いていますか?
二十年前の?
四十年前の?
百年前?

ではまたお会いできるのを楽しみにしています。